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“子どもホスピス”の起源 ヘレン・ダグラス・ハウスの思想とは?

世界初の“子どもホスピス”ヘレン・ハウスの歴史

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ヘレン・ハウスは、1982年にイギリスのオックスフォードにオープンした世界で最初の小児ホスピスです。教会のシスターをしていたフランシス・ドミニカさんが、知り合いの親御さんから重い病気を抱えたヘレンという2歳の女の子を預かったことから、ヘレン・ハウスの歴史は始まりました。

親としては、その子がたとえ重い病気を抱えていたとしても、家でケアをしながら一緒に過ごしたいと思うのはごく自然な気持ちだと思ういます。しかし、そうなると親御さんは昼夜問わず24時間その子のケアをしなければならなくなります。と同時に、他の子どもたちも育て、家事も行い、働いて収入も得なければならなりません。そうした負担が重なってしまうと、一家は社会的に孤立しかねません。

ヘレンを預かったシスター・フランシスは、そんな親御さんの状況に気付き、彼らの負担を少しでも取り除こうと、医療ケアが必要な子どもを一時的に預かることができる施設として子どもホスピスの設立を決意したのです。

青少年向け小児ホスピス ダグラス・ハウスの誕生

image-1医療の進歩に伴い、過去には幼くして亡くなっていた病気の子どもたちが、もう少し長く生きることができるようになってきました。ただし、思春期を超えてくると小児を対象としているヘレン・ハウスの施設では合わなくなってくる部分がありました。

一方で、従来の大人向けのホスピスは終末期の患者さん(主に高齢者)が最期の時を過ごす場所という色が強く、ヤングアダルトの彼ら自身や、彼らの両親のニーズには合っていませんでした。

ダグラス・ハウスは、そんな彼・彼女らのために、ヘレン・ハウスの理念を継承し規模を拡大する形で、もう少し上の年齢層となるヤングアダルト(16歳以上)を対象として、ヘレン・ハウスに隣接する形で2004年にオープンしました。写真のとおり、バーカウンターなんてものもあるんです。

「旅人が休息をとる施設」という語源から、これまでの医療の枠を超えて

image-2ヘレン・ダグラス・ハウスでは、医療者以外にも多様なスタッフ・ボランティアが一緒に働いています。子どもたちだけでなく、兄弟・姉妹や親御さん、そして子どもの同級生や今会いたい人と、安心して楽しく過ごせるような開放的で穏やかな雰囲気が そこにあります。

また、余命が僅かな子どもと死別するまでの時間――自宅で亡くなることを望まない家族や、生まれてから死ぬまでずっと病院でしか過ごせない子どものための空間もあります。そして、亡くなってしまった子どもの家族、親御さんや兄弟・姉妹のサポート(グリーフケアと言います)も行なっています。子どもとの死別・喪失体験における哀しみを、少しでも分かち合い、支え合うための機会を作り出しているのです。

ホスピスという言葉の語源は、ラテン語のhospesに由来します。hospesとは「見知らぬ人、客人(ゲスト)」 を指します。この言葉から派生した単語・Hospitality(丁重にもてなすこと)から、ホスピスは「丁重に手厚くもてなす」施設であると言えます。

ヘレン・ダグラス・ハウスは、子どもにとっては治療を目的とした病院でなく、普段の家庭でのケアを受けながら、子どもらしい自由なひとときを過ごせる場所。家族にとっては、医療ケアの負担から離れた穏やかな休息の時間を持てる場所になってるのです。

そして、この度 国立成育医療研究センターが開設する医療型短期滞在施設「もみじの家」もまた、ヘレン・ダグラス・ハウスと思想を同じくした施設として、重い病気を持つ子どもと家族が 穏やかなくつろぎのひとときを過ごす場所でありたいと思っております。